2019年5月22日水曜日

タグの読みすぎ問題を考える

RFIDを使っていると、タグの読みすぎ問題というのが発生します。タグは読むためにあんだろーが!読めないより読めたほうがいいに決まってんじゃねーか!というのは御尤もなわけですが、特にハンディリーダなど使っていると読みたくないタグまで読んでしまっていやーなんやこれ想定外やなこれは聞いてないでー、という状況が発生します。

例えば


こういうところで、ダンボールにはタグが付いていて、出庫処理をするのに手前の3個のダンボールだけ読みたいとするじゃないですか。しかし後ろにもダンボールがあってこっちにもタグが貼ってあるわけですね。


この状態でハンディリーダを使って読み取りすると、読みたくない方のタグまで漏れなく読んでくれるわけです。これがタグの読みすぎ問題と言われるものです。もちろん読みたくないタグが近くに無いような状況を作ればいいのですがそういう状況を作れない(場所がない)場合が多いと思います。

この問題を解決するのに2つのアプローチがあります。1つは電波強度を落とすという方法、もう1つはタグの電波受信強度(RSSIと呼ばれるもの)を利用するという方法になります。(実はもう1つあって、読みたいタグが最初からわかってる場合はそれだけ読むようにするというのもありますがこちらは運用とかも絡んでくるので今回は外します)

電波強度を落とす方法は、リーダから出す電波の強度を落として遠くのタグを読みにくくすることで近くのタグだけ読ませようというやり方、受信強度を利用する方法はリーダからの出力は最大にしておいて、タグからの受信電波強度を見て、あるしきい値以下の強度だったら読まなかったことにするということでこちらも近くのタグだけ選別しようというやり方です。

で、果たしてどちらの方法が人にやさしいというか人間の感覚にフィットするのかというのが気になりましたので試してみました。

利用したのはこちらのリーダ


AT-S100ちゃんです。今流行りのスレッド型になります。出力は1Wでアンテナは円偏波です。

1番上のダンボールの写真のアングルから、ダンボールから50cm、1m、1.5m離れた場所でリーダを普通に1振りしてどんなもんかを計測します。読みたいダンボールは3個、後ろの読みたくないダンボールは3個、合計6個のタグを読み取りします。

まずは電波強度を変えるやり方、MAXの30dBmから3dBmずつ落として読み取ります。電波強度を変える方は単純に遠くのタグを読めなくする方法なので、読み取りできた枚数が3枚になるポイントを探ります(もちろんその3枚が手前のダンボールのタグである必要があります)。

結果がこちら(数値は読み取ったタグの個数です)

出力\距離 0.5m 1m 1.5m
30dBm 6 6 6
27dBm 6 5 5
24dBm 6 5 5
21dBm 6 5 5
18dBm 4 4 4
15dBm 3 3 3
12dBm 3 1 0

今回のパターンでは、15dBmにすると読みたいタグだけ読んでくれてることがわかります。

次に受信強度(RSSI)を見るやり方、こちらはリーダの出力は最大の30dBmにしておいて、手前のタグたちのRSSIと後ろのタグたちのRSSIを見てしきい値を設けられるかがポイントになります。手前3個でのRSSI値の最小値と、後ろ3個のRSSI値の最大値に差があればあるほどしきい値を設けやすくなります。

距離\RSSI 手前3個で最小のRSSI 後ろ3個で最大のRSSI
0.5m -52.3 -63.0
1m -58.3 -66.8
1.5m -61.8 -67.9
単位:dB

0.5mのときはRSSI値に結構差がありますので、-58あたりをしきい値にしていれば概ね大丈夫のようです。距離が離れていくと差が縮んでいくので、1.5mのときは一応しきい値-64くらいでやれそうですがちょっと危ないかなーという感じですね。

結果としては読み取りたいタグとリーダの距離が近い場合は受信強度を見る方法もありですが、必ずこの距離で読んでくださいねーとかそれを制限するのもちょっと難しそうなのでやはり出力を調整する方法が現実的のようです。


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