2026年1月20日火曜日

アンテナとタグの距離を測る その4

 前回は MF-PDOA を実際に計算して求めてみました。が、思ったような結果は得られませんでした。マルチパス(壁や床からの反射波)があると、位相が合成されてしまって結果が歪んでしまいます。マルチパスの影響を取り除くには FFT を用いる方法やもっと幅広い帯域での測定が必要みたいですが、リーダで読み取れるチャンネルは限られているのでそう簡単には実現できません。

そこで簡単にチャレンジできることとして、アンテナを2枚にして2か所から測定してみることにします。ということで調べていると、2枚のアンテナを使うことでAOA(Angle of Arrival:到着角度)の推定もできることがわかりました。2枚のアンテナを並べて設置し、タグからの電波を受信すると、タグの位置(角度)に応じて2枚のアンテナに届く電波の経路長にわずかな差が生じます。この経路差が、アンテナ間の位相差として観測されます。

距離(PDOA)と角度(AOA)の両方がわかると、タグの2次元的な位置(平面上の座標)が特定できるようになります。さらに、マルチパス対策としても強力です。マルチパスは直接波とは異なる角度から届くことが多いです。AOAによって「タグがあるはずの方向」がわかれば、その方向以外から届く(位相を乱す)反射波成分を理論的に排除しやすくなります。と、Geminiちゃんが申しております。

まじすか?ということでまずは AOA から試してみました。

前々回に作成した位相を表示するだけのアプリを改造して、2枚アンテナで取得した位相の【差】を表示するようにしてみました。

確かにタグを左右に動かすことで位相の差が変化することがわかります。周りが金属だらけなのでマルチパスしまくりでしょうけど、いちおう判断つくくらいの動きは見れました。ただ真正面にタグがあるときも位相の差が結構70度くらい出ているのが気になります。

真正面にあるときはそれぞれのアンテナとタグの距離は同じなので、測定される位相は同じ値になって差は0になるはずです。アンテナのケーブル長や、リーダ内部の基板上の長さのちょっとした違いで差がでるそうなので、これが表れているのだと思われます。この真正面のときの差は、リーダ固有のオフセット値と考えれば補正値として利用できそうです。


2026年1月6日火曜日

アンテナとタグの距離を測る その3

 前回はRFIDリーダで取得できる位相について見てきました。約16cm動かすと位相が一周するのがわかりました。しかしこれだけでは距離を正確に測ることができません。位相が何週したかがわからなければならないからです。

そこでMF-PDOAという手法があります。これは異なる周波数で位相を測り、その差分で距離を想定するやり方です。具体的には異なる周波数 f1 と f2 で位相を測った場合、

Φ2 - Φ1 = (4π・d f2 / c) mod 2π - (4π・d f1 / c) mod 2π = 4πd(f1 - f2)/c

となって(何週分かはどちらも同じと仮定した場合)、これを d について解くと、

d = c/4π・ΔΦ / Δf

となります。横軸に周波数、縦軸に位相で測定値をプロットした場合、直線となってその傾きから距離が求められるということになります。

まじすか?ということで実際に計測してみます。

測定風景は写真撮り忘れました。左が周波数(MHz)で値が位相(rad)になります。位相は複数回測定した平均値で、-πからπに収まるように補正しています。


これを横軸周波数、縦軸位相でプロットするとこうなりました。いい感じに直線になってますね。この直線の傾きから距離が計算できるということになります。実際に計算してみました。

100cm のタグ 計算値 18.623m

200cm のタグ 計算値 14.447m

300cm のタグ 計算値 28.542m

んー・・・ これは・・・ 何か間違えてる?

Geminiちゃんに聞くと、実際はアンテナの長さとかも含まれるからじゃね?あとマルチパスの影響もあるだし。みたいなこと言ってました。まぁ室内で測定してるしマルチパスはありそうだよなー、でも現場で使うにはマルチパス絶対あるだろうしなー、ということでもう少し探ってみたいと思います。



2025年12月25日木曜日

アンテナとタグの距離を測る その2

 前回の記事(もう5年も前ですけど)でざっくりとした計測をしたんですが、そんなことではいかんと思い直し、ちゃんと技術的にアプローチしようということにしました。

ちゃんと基礎からやって、どこまでできるかチャレンジしていきたいと思います。

リーダで計測できる位相を使います。位相ってあんまり着目していなかったのでどんなもんか見るところからやっていきます。

まずアンテナとタグの距離を d とすると、アンテナから出た電波がタグまで行って帰ってくるまでの距離は 2d になります。電波の波長を λ とすると、計測できる位相 φ は

φ = 2π * 2d/λ mod 2π

となります。電波の周波数を f とすると、λ = c/f なので、φ = 4πdf/c mod 2π になります。

これを実際に見てみようということで、位相だけを見るアプリを作ってみました。


まず 50cm のところにタグを置いて計測していますが、位相の値は安定しているのがわかります。ただ手を動かしたりすると位相が変化するので、結構マルチパスの影響を受けることもわかります。

50cm のところで 270° くらいだったので、これがぐるっと1回転するところまでタグを離していきます。周波数は 916.8 MHz 固定で出力したので、1波長は 3×10⁸ / 916.8×10⁶ ≈ 32.7 cm ということで、往復なので半分の 16cm くらい動かすと1回転する計算になります。動画でもそれが確認できると思います。

これだけだと正確な距離を測るには難しいので、MF-PDOAという手法にチャレンジしたいと思います。これは複数の周波数で位相を測定し、その差分で距離を求めるという手法です。次回以降これについて書いていきます。


2025年12月5日金曜日

第13回久辺テクノフェスタに出展しました

 

 11月15日に開催された第13回久辺テクノフェスタに出展しました。
    昨年の模様はこちら


恒例の「光る絵」体験会をひらきました。







    今年は宇宙甲子園とみまもり自販機の展示もおこないました。


2025年11月17日月曜日

同軸ケーブルの損失を測定してみる

 RFID や LoRa の機器では、アンテナとの接続に同軸ケーブルがよく使われます。高周波に対応した同軸ケーブルは固いのが多かったり、引き回しするのに扱いが難しかったりします。そこで疑問なのが、ケーブルの損失を高めるような要因はどんなものだろうか?という問題です。

そこで、今回は実際に損失を測定して、どんな要因があるかを探っていきたいと思います。

使用するのはこちらの nanoVNA ちゃんです。1万円くらいなのに1GHzまで対応してたりしてなんとも便利な測定器です。この状態で校正済にしてます。表示は 920MHz がセンターで、 917.5MHz から 922.5MHz までの表示にしてます。

測定に使用するケーブルはこちらの LoRa 機器に付属してた 60cm のケーブルです。

まずは接続して、何もしてないときの損失を測定します。


この状態でだいたい 1.2dB 程度の損失のようです。ちょっと大きい気もしますがコネクタ等の影響でしょうか。

ではここからいろいろ試してみます。

まずは万力で挟む!
曲げる!
缶コーヒーに巻く!
アルミホイルで巻く!
スチールウールで挟む!


結果、どの要因も大して影響せず 1.2dB 程度のままでした。さすが同軸ケーブルは強い。




2025年10月3日金曜日

【連載目次】現場で進めるRFID棚卸し導入ガイド ~初心者でも失敗しないステップ~



読者の皆様へ

本連載は、「棚卸しの工数を減らしたい」「在庫管理のミスをなくしたい」とお考えの現場担当者・管理者様向けに、新しい技術であるRFID(Radio Frequency Identification)を導入し、運用を成功させるまでの具体的なステップを全7回で解説します。

理論だけでなく、実際の現場で「失敗しない」ためのノウハウを凝縮しています。ぜひ最初から順にお読みいただき、貴社のRFID導入計画にお役立てください。


連載一覧:失敗しない導入への全ステップ

検討フェーズ記事タイトル記事リンク
【導入準備】第1回:導入前の準備と現状把握 → 成功の鍵は「現状分析」にあり。工数、ミス率、コストなど、導入前の現状を徹底的に見える化する方法。記事を読む
第2回:RFIDタグの選定と取り付け・エンコード準備 → 読み取り精度を左右するタグの選び方、失敗しやすい取り付け位置、エンコード(ID付与)の具体的な手順を解説。記事を読む
【機器選定】第3回:RFIDリーダーの選定と現場デモによる効果検証 → ハンディ型?固定型?貴社に最適なリーダーの選び方と、導入前に必ず行うべき「現場デモ」での検証ポイント。記事を読む
【システム連携】第4回:Excel連携によるシステム構築と在庫マスター連携 → 複雑なシステム開発不要!Excelを基盤としたシステム構築のステップと、既存の在庫マスターと連携させる方法。記事を読む
【実務運用】第5回:現場での棚卸し業務開始とデータの収集 → 実際の棚卸し作業をスムーズに進めるためのオペレーション手順と、正確な棚卸しデータを効率的に収集するコツ。記事を読む
第6回:棚卸し結果の分析と運用改善サイクル → 収集したデータを分析し、在庫差異の原因特定や、運用ルール、機器配置を継続的に改善していく方法。記事を読む
【未来・拡張】第7回:導入後のフォローと拡張案(資産管理、入出庫検品など) → RFIDを棚卸し以外(固定資産管理、入出庫検品など)へ応用し、企業全体の業務効率を向上させるためのロードマップ。記事を読む

【無料相談・デモのお申し込み】

「この連載を読んだけど、うちの現場で本当にできるか不安だ」 「うちの商品に合うRFIDタグをプロに選定してほしい」

現場の課題は企業ごとに異なります。貴社に最適なRFID導入計画について、専門家にご相談ください。

まずはご相談!【無料デモ・導入相談】のお申し込みはこちら

すぐに効果検証!【有償トライアル】のお申し込みはこちら

この連載で解説したすべてのステップを、経験豊富な専門チームがサポートします。
【RFID導入支援実績多数】株式会社ハヤト・インフォメーション

現場で進めるRFID棚卸し導入ガイド ~初心者でも失敗しないステップ~ 第7回:導入後のフォローと拡張案

 

導入後のフォローと拡張案

第7回:導入後のフォローと拡張案

導入はゴールではない!RFID棚卸しをさらに進化させる次の一手

最終回では、導入後の運用を軌道に乗せるためのトラブル対応と、将来的なシステム拡張の可能性について解説します。

1. トラブル例と対応Q&A

導入後に寄せられやすい「リーダーの接続不良」「タグが読み取れたのに未発見のまま」といったトラブルに対する具体的な対応策をFAQとしてまとめ、すぐに参照できるように整備しましょう。

2. 利用実態調査による改善要望の収集・反映方法

運用が安定したら、利用者の声を定期的に収集します。収集した要望を「影響度」と「実現容易性」で評価し、優先度の高いものから順にMANICA EXCEL TOOLのマクロ改修運用ルールの変更に反映します。

3. Excelマクロ追加や外部連携開発の計画

MANICA EXCEL TOOLはExcelベースのため、柔軟なカスタマイズが可能です。特定の条件でアラートを出す機能や、棚卸し結果を固定資産管理システムへ自動連携する仕組みの開発を計画しましょう。

4. AIやIoT技術活用による次世代展開の可能性

将来的なDX(デジタルトランスフォーメーション)を見据え、RFIDリーダーと連携したスマートキャビネットの導入や、AIによる紛失リスクの予測・警告などの次世代展開も視野に入れましょう。

5. 運用継続・拡張計画の策定

RFID棚卸しを恒久的な業務プロセスとして定着させます。異動や新入社員向けに継続的なトレーニング体制を組み込み、RFIDリーダーやタグプリンターの機材更新計画を策定し、予算を確保します。

6. 導入困難時の代替訴求ポイント

RFIDの導入が難しい場合は、タグではなく既存のバーコードQRコードを使ってMANICA EXCEL TOOLを運用し、まずはExcelベースのデータ突合・分析に慣れるところから始めるスモールスタートも可能です。


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